今回は昨年2023年の上半期における“もっとも人気のあった中華圏映画”と称されています台湾のホラーコメディ『僕と幽霊が家族になった件』という映画をご紹介したいと思います。
※動画も作りましたのでこちらもぜひご覧ください!
この映画は非常に革新的な映画でした。
それは今世界中の映画ファンが辟易しているポリコレに新しい風を吹き込んだのではないかと思うんです。
多様性とはなんぞやと、いちいち言わんでも良いし全てを重く表現する必要性はないと僕個人は考えるんですが、こちらの作品は見事なまでにおもしろくそして的確に表現してくれています。
真正面からがっぷり四つで組み合ってるのに軽い感じで、なおかつするっとのど越しが良いみたいな。
ブログタイトルにあるようにノンケとゲイの話です。
しかもこの主人公、普通にゲイのことを『気持ち悪い』と言い切ってます。
最近の映画界、いやメディア全般でこんなことなかなか言えないですよ。
それをばっさり気持ち悪いと言っちゃってるのが凄い。
でもその人の存在やその性的指向を完全に拒否拒絶するものではなくて、自分はこうだとはっきり伝えて、そして相手のことを1人の人間として普通に認めて、歩み寄って当たり前のように友情が生まれることも描いているんです。
この作品はとても感動的でもありますし本当におすすめなんでぜひみなさんにも観ていただきたい!
というわけで『僕と幽霊が家族になった件』を紹介していきまーす!
僕と幽霊が家族になった件 作品情報
監督 チェン・ウェイハオ
上映時間 130分
公開時期 2023年(Netflix世界独占配信)
金馬賞ノミネート
最優秀作品賞
最優秀主演男優賞
最優秀脚色賞(受賞!)
最優秀主題歌賞
最優秀編集賞
最優秀アクション設計賞
アカデミー賞国際長編映画部門台湾代表
監督のチェン・ウェイハオは台湾ホラーブームのきっかけとなった大ヒット作『紅い服の少女』の監督です。
紅い服の少女はまだ一章しか観ていないんですがこれまためちゃくちゃおもしろいんで近いうちに紹介感想記事を作りますね!
『僕と幽霊が家族になった件』は昨年の金馬賞では6部門にノミネートされ、その中の脚色賞を見事受賞しました。
またアカデミー賞国際長編映画部門台湾代表に選ばれてもいて、世界的にも評価されれている作品です。
僕と幽霊が家族になった件 あらすじ
頑張ってはいるものの空回りしていることが多い警察官の青年ウー・ミンハン。
とある事件の容疑者を追いかけるもミスにより逃がしてしまい、同期との差は開く一方。
そんな彼は捜査中に赤い封筒を拾います。
それは台湾に古くから伝わる冥婚の習わしの封筒。
若くしてひき逃げ事故で亡くなったゲイの青年マオ・バンユーと結婚をしなければならなくなってしまったミンハン。
ミンハンは死者でしかも男との結婚をかたくなに拒否しますが、それが原因で立て続けに不幸な目に遭ってしまい、しぶしぶ冥婚をすることに。
マオが成仏するには生前にやり残したことを全て片付けなければならず、ミンハンはマオのため、というよりは自分の自由のために奔走するのですが騒動は思わぬ形で繋がっていき…。
僕と幽霊が家族になった件 感想と見どころ
最初に冥婚について解説しておきましょう。
冥婚は他にも鬼婚、陰婚、幽婚、死霊結婚なんていう呼び方があります。
ざっくり簡単に言うと冥婚というのは生きてる人が死んじゃった人と結婚することです。
そんなばかなって設定ですよねー。
でもこれって本当にあるんですよ、しかも世界中である風習なんです。
古くは古代エジプト、ギリシャ神話にも冥婚がでてきますし、三国志にもでてくるし、実は日本でも青森、山形、沖縄でもあるんです。
まあ現在では完全に無くなったわけではないものの、さすがに少なくなっています。
ほぼ無いと言ってもいいくらいですが完全に消えたということもないって感じです。
基本的には中国をはじめとする東南アジアに多い風習となっています。
で、台湾の冥婚ですが、台湾の冥婚は紅い封筒、ホンパオに死者の髪の毛や写真などを入れて道端に落としておきます。
そしてそれを拾った異性がいたら、周りで監視していた親族たちがわらわらでてきて、死者との結婚を強要してくるんです。
逃げないように封筒を拾ってくれた人を囲むとも…((((;゚Д゚))))ガクガクブルブル
これ映画の中ではおもしろおかしく描かれていますが、よくよく考えてみるとかなり怖いしまじホラーですよ(;^ω^)
台湾のだれもかもがするわけじゃなくて、冥婚には条件があります。
1:死者は未婚男性であること
2:死者はこの世に未練を残した人であること
3:死者が相手を気に入ること
この3つです。
ただこの条件は結構雑で、未婚男性じゃなくてもいいんです。
女性であってもいいし、なんなら既婚男性でもいい。
ヘンな話ですよねw
でも冥婚の目的は大前提として死者を気持ちよく天国へ送り出す事なんで、時代と共に変わっていったのだと考えられます。
それから未練を残して死んでしまったという条件も不思議で、本人にしかわからないはずなのに周りの人が『きっとこの子は結婚できなくて未練が残っているはずだ』って決めつけてるわけですから。
まあ細かいことはわからんですけどねw
で、死んだ人が封筒を拾ってくれた人を気に入るかどうかなんてどうやってわかるんだよって気になる人もいるかと思いますが、これは占い師によって相性をみてもらうそうです。
占い師が『これは良いね!最高だよ!』って言えば冥婚成立!
おめでとうございまーす!酒を飲みまーすwってなるわけです。
でも『だめだこりゃ』っていう結果がでたなら…どうするんですかね?
はい撤収!ってかんじでさっさとリセットするんでしょうか?
まよくわからんですけど、そんな風習がいまだに残っていることもあるという台湾の冥婚についての補足説明でした!
というわけで感想と見どころをお話ししていきます。
この作品の見どころはこちら。
・ゲイを嫌うミンハンと恋人の幸せを願うゲイの青年マオの関係性
・マオの親子関係
・ミンハンが追うマフィアのボス
この3つですね。
この3つが個人的に凄く注目してほしいポイントです。
ミンハンとマオのおもしろおかしい関係性
まず一番の見どころはミンハンとマオの友情!
これがもう最高におもしろいんです!
2人の会話、言い争いのシーンのテンポが良いし緩急もうまい。
以前にご紹介しました怪奇温泉旅館の笑いの押し売り的な感じも少なめで、僕の好きな笑いのリズムでしたね。
ミンハンとマオの関係は冥婚の封筒を拾った瞬間に始まるんです。
マオがミンハンに一目ぼれしたかと言うと全然そんなことないし、ミンハンがゲイの道に目覚めちゃうとかそんなこともなく、出会いはまさに最悪なんですね。
ミンハンはそんな古の風習に従いたくなくて拒絶していたんですが、応じないことで不幸が連続するんです。
一難去ってまた一難どころか二難三難ある感じ。
まあ実際にはマオがミンハンに自分のやりたかったことをやってもらうために、協力してもらうため嫌がらせをしていたようです。
ミンハンはノンケでアダルトサイトで4545したい青年ですから、とにかくさっさと自由になるために協力します。
占いではゲイの青年マオはミンハンのことを気に入ってる!っていう結果がでてたんですが、実はまったく気に入ってなかったんですw
僕は嫌だったんだ!!
なんて叫んでてまじ笑えますw
中盤で事件の関係者と思われる男を追ってゲイバー?に入るんですけどそこのやりとりも笑えますw
ゲイをときめかせる表情をしなくてはならなくなったミンハンがキリッて顔を作るんですが、ダメ出しを連発するマオがついにときめいちゃうんですw
惚れやすすぎワロタw
でもそこから二人の仲が恋愛的になっていくんじゃあないんです!
あくまでも友情、絆が深まっていくんです!
それがめちゃくちゃ良いんです!!
マオと父の微妙な関係
マオはお母さんがいなくておばあちゃん、お父さんと一緒に住んでいたんです。
事故に遭う前にお父さんに自分は付き合ってる彼氏と結婚をしたい、いっしょになりたいと話すんですね。
でもお父さんは即座に「だめだ」と、とにかく反対してマオの言う事に耳を貸しません。
おばあちゃんは恋愛対象が異性でも同性でもかまわないじゃないかと、優しい言葉をかけるんですが、お父さんは完全に拒否。
マオは勇気を出してカミングアウトしたのにまったく受け入れてもらえなかったことで酷く悲しんだんですね。
で、そんな状態で事故に遭ってしまったものだから、お父さんとの関係も修復したいというのもあって、ミンハンにお願いして言葉を伝えてもらうようにするんですが、そもそっも冥婚という古い風習なんかで息子は救われないと考えていたお父さんはミンハンのこともあまり好きじゃなかったんです。
そんなお父さんが何を思い、どんな行動をしていたのかというのがクライマックスで明らかになるんですが、もうここはね、本当に涙ちょちょぎれます。
まあこんなこというとなんとなく察しはついてしまうかもしれませんが、本当に感動しかないですよ。
親子の絆、親とはいつでもどんなときでも子供のことを想っているわけです。
それまでなぜ冷たくしてきたのか、マオの言葉をまったく聞き入れなかったのか、これが明かされるとき、きっとあなたは涙します。
あと、お父さんとの関係のところでめちゃくちゃ面白いシーンもあって、お父さんはマオのスマホの中身を知りたかったんです。
でもパスワードで開くことができないからミンハンになんとかならないかと頼むんです。
ミンハンはマオの声が聞こえるからパスワードも即座にわかるんですが、そのスマホの中身、なんとスケベな自撮りでもりもりだったんですw
お父さんの目の前で行われるスリリングな攻防もまじで注目ですw
マフィアのボスがおもろすぎる件
ミンハンが追っていた事件は台湾マフィアに繋がっていたんですがそのボスがコミカルなんですw
口封じの工作とかうまいんですがマフィア的な怖さをまったく感じない!
むしろ終盤になると登場するだけで絶対おもろいことが起こると予想できるし、笑えてくるくらいw
実際親分のクライマックスは今思い出しても笑えるくらい僕のツボにハマっちゃいましたw
このシーンはぜひご自身の目で確かめてください!
まとめ
というわけで『僕と幽霊が家族になった件』の紹介と感想でした。
今やハリウッド、ディズニーなんかでは同性愛でもいいじゃないか、いやむしろ同性愛こそ美しいといわんばかりに無駄にわざわざその設定をぶっこんできてますよね。
スーパーマンにゲイ設定ぶっこんだり、今までの名作にその設定を入れる必要あるんか?と疑問しかないんですが。
アメリカでの有名作品のLGBTQ配慮は説教臭いし、重すぎるように感じるんです。そしてくどい。
チェン監督はインタビューで本作のテーマについて『非常にデリケートで重いテーマだからこそ取り扱いが難しいし、説教に見えるような作りにはしたくなかった。コメディにより意図しているものよりズレてしまっては大変なことになる』なんて言っています。
最初にも言いましたけどがっちり真正面から向き合って、LGBTQという性的マイノリティの人々の苦悩、いや、苦悩というより性的マイノリティの人をマオというキャラクターを通して一人の人間であること、ごく当たり前にいる仲良くなれる友人であること、そういうのを重すぎない軽いコメディで描いているのは本当に見事でした。
監督はまた他にも『やはりコメディという形式が一番良いと感じたんです。できるだけ、説教に見えるようなことは避けたいと。観客が共感できる内容にしたいと考えていました。ただし、コメディを作ることは簡単なことではありません。少しでも“ズレ”が生じれば、大変なことになる恐れがあります。このバランスが非常に重要だと思います。』
と話しています。
絶妙なバランスで描かれたコメディ映画であり感動大作でもあるので性的なテーマは嫌だと、観たくないと言う人でもこれは絶対おすすめなんでぜひ観てほしいです。