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サスペンス

【ネトフリオリジナル映画】パワー・オブ・ザ・ドッグ感想(ネタバレ)【BLサスペンス】

こんにちは!としひろです。

今回はアカデミー賞を始めとする多くの映画賞で評価されたネットフリックスオリジナル映画【パワー・オブ・ザ・ドッグ】の感想です。

トレーラーを観ると男の中の男みたいなフィン(ベネディクト・カンバーバッチ)に貧弱な男の子が鍛えられるみたいな、成長の物語なのかなと考える人もいそうですが全く違います。

この映画はサスペンスです!

しかもBL?

ポイントは一つ。
異常で歪な愛憎劇。

前半1時間は話が本当に見えなくて、でも凄い緊張感…。

この映画は一帯なんなんだ!?

そう思っていたらフィル(カンバーバッチ)の様子が…。

フィルは前半ではオオカミ、しかし後半になるにつれて犬のよう。

クライマックスのところはもう子犬ちゃんです。

カンバーバッチの目で表現する演技が凄い!

トレーラー

重要登場人物紹介

フィル・バーバンク(ベネディクト・カンバーバッチ)

引用 Netflix

主人公の一人。

男の世界で生き、弟のことを心配しすぎなお兄ちゃん。

ブロンコ・ヘンリーという亡き師を崇拝し、その感情は異常なまでに強く、彼が遺したスカーフで興奮してしまうほど。

牧場の絶対的なボス。

ジョージ・バーバンク(ジェシー・プレモンス)

引用 Netflix

フィルの弟。

兄とは違い心優しくおとなしい性格。

ローズに惹かれていく。

ピーター・ゴードン(コディ・スミット=マクフィー)

引用 Netflix

本作もうひとりの主人公。

お嬢ちゃんと揶揄されるような華奢な体つきで、ストレスを感じるとフラフープして心を落ち着かせる男の子。

母ローズを「ローズ」と名前で呼び、異常な親子関係がちらちらと見え隠れする。

亡き父からは強すぎると評されていた。

ローズ・ゴードン(キルスティン・ダンスト)

引用 Netflix

未亡人。

息子ピーターを狂おしいほどに愛している。

フィルの執拗な嫌がらせでストレスがたまり、辞めていたお酒を飲むようになりアル中になる。

ブロンコ・ヘンリー

引用 Netflix

フィルの師。

フィルの中では絶対的な神であり命の恩人でもある。

部下たちもヘンリーの話には夢中になる。

あらすじ

引用 Netflix

1925年のアメリカ、モンタナ州。

牧場の経営で成功を収めていたフィルとジョージのバーバンク兄弟はある日、未亡人のローズ・ゴードンが営む宿屋で世話になる。

弟のジョージはローズに心惹かれ、やがて結婚する。

ローズはバーバンク兄弟の牧場へ移り、一人息子のピーターは医学を学ぶためにジョージの出資で大学へ通うことに。

フィルはローズのことを金目当てで弟をたらし込んだ女と思っていて、嫌悪感から敵意をむき出しにしていく。

フィルの嘲弄する態度にローズはストレスから家の中で酒を飲み始める。

そんな時、息子のピーターが夏休みで牧場へ泊まりに来た。

華奢で弱そうな外見からお嬢ちゃんと揶揄するフィルに再び言動をバカにされたピーターは自分の部屋に閉じこもるようになる。

ある日、牧場から離れた森の中でフィルが崇拝している亡き師ブロンコ・ヘンリーのスカーフを用いて自慰行為をしているところを偶然、ピーターが目撃する。

気配を感じたフィルはピーターを見つけるやいなや激怒し、追っ払う。

翌日からフィルは人が変わったようにピーターに優しく接し始める。

そしてフィルとピーターは行動を共にするようになる。

ネタバレ注意!パワー・オブ・ザ・ドッグ感想

めちゃくちゃおもしろかった!とは言えないけど、なんだかじわじわおもしろいというのが僕の評価です。

星をつけるなら5つ星中4つってとこ。

伏線回収がとても見事で終わり方も秀逸!

サスペンス要素が強く子供の成長物語なんかじゃないのでトレーラーに騙されないように!

バーバンク兄弟はまさに対照的

引用 Netflix

兄のフィルは牧場の部下たちからも絶対的な信頼を得ていて、まさにボスといった感じ。

粗野で横暴な印象が強く、牛の去勢を素手でやってしまうくらいワイルドな男。

また大学も出ていて非常に優秀でもあります。

対して弟は体格ふとっちょで、心穏やかな優しい男。

しかし部下からの信頼はほぼゼロ。

おもしろい話もできないただの成金野郎っていうのが部下からの印象でしょう。

冒頭部分でジョージが部下たちに食事の時間だ、移動しろと言うシーンがあります。

部下はまるっきり無視。

だれも動かない。

しかしフィルが行こうといえばすぐさま全員が移動する。

出だしから兄弟をうまく比較して性格を印象つけるからフィルの後半のギャップにも衝撃を覚えます。

エロチシズムが炸裂

引用 Netflix

女性監督だからなのか、エロスの表現がリアルでなまめかしいのがこの映画の特徴です。

フィルがブロンコ・ヘンリーの鞍を触る手付き、スカーフで自慰行為をする2分、そしてフィルとピーターのタバコを吸い合うシーン。

どれも官能的ですぐにセックスをするようなラブシーンよりもよほどエロい。

むしろエロというよりまるで神聖な儀式のよう。

またピーターを演じるコディスミットマクフィーが中性的でシーンによっては本当に少女のように見えます。

それがまた妙なエロさを強調させているんです。

ワイルドな男と中性的で華奢な男の子のカップリングはまさにBLといった感じでした。

ピーターは実はオオカミ

引用 Netflix

フィルが主人公のように見えますが実際にはローズの息子ピーターが主人公。

そしてフィルが前半と後半でガラッとイメージが変わるのと同様にピーターも変わります。

冒頭に「僕は母の幸せだけを願った。」「僕が守らねば誰が守る?」という意味深なセリフがでるんですが、ラストのピーターの表情からまさにその願いを実行し叶えたんだとわかります。

フィルにいじられて泣いてしまうような時もありますが、平気でうさぎを殺し解剖するほどの冷徹さも持ち合わせています。

そして作戦のためにフィルの心を懐柔するような知略にも富んでいる恐ろしい男の子なんです。

ラストシーンの本当に微妙にニヤッと笑うところは怖さも感じました。

いや、もともとオオカミだったのが徐々に暴かれていったと言う方が正しいのかもしれません。

逆にフィルは子犬のよう

逆に一匹オオカミのようなフィルはもともと自分をさらけ出せない子犬だったんですね。

フィルがしている仕事柄というのもあるけど時代背景もあり、フィルは自分を同性愛者とは言いませんし隠し続けてきたんです。

森の奥でスカーフに興奮したり秘密の本を持っていたりして時折発散させてきたんですが、自分を慰めるにしても限界があります。

自分を理解してもらえない孤独はストレスになり、周りを攻撃してしまいます。

それが前半のフィルの苛立ち。

そんなときにピーターに秘事を見られたことである感情が生まれます。

いや、もともと気にしていたけどその「事件」をきっかけにフィル本人が気づいたのかもしれません。

ピーターに対し好意を持っていると。

事件後はちょっと気持ち悪いくらいに優しくなります。

すんごい笑顔で接していたりします。

縄を作ってあげて、乗馬を教えてあげて、人生の歩み方も。

そう、もうフィルはピーターにときめきすぎちゃってるんです。

出会いのシーンから実はお嬢ちゃんとか小公子だとか悪口言いながら実際は目でピーターを追っています。

お前は小学生男子か!

極めつけは「あの丘を見て何に見えるか?」という質問にピーターは「犬」と答えたこと。

フィルからしたらこの質問の答えが崇拝し愛するブロンコ・ヘンリーとピーターが重なった瞬間となったわけです。

と同時にピーターは自分の孤独を埋めてくれる存在になるとビビビッときたのかもしれません。

好きな女子が共通の趣味を持っていたとか、好きなアニメが同じだったとかでときめいちゃう思春期真っ只中の男子のようでフィルがほんとかわいく見えてしまいました(笑)

最後に炭疽症になってフラフラの中、できあがった縄をあげるためにピーターを探すところはちょっと切なさも。

ローズとピーターの歪な関係

普通の親子のようで、でも異常にベタベタしているところもある。

ピーターも母さんと言ったりローズと名前で呼んだり。

正直ちょっと気持ち悪くらいの親子関係に僕は見えました。

父がいなくなったことでピーターは母を守らねばならないという使命感が生まれました。

アルコールにおぼれた父のように母ローズがならないように支えるようになりました。

時に息子として、時に夫として。

ローズもピーターを息子としてみてはいるんですが、同時に夫のように頼っている面もあります。

ピーターは「もうそういうことはしなくていい。」と言っています。

(いったい今までなにをしてきたんだろう…。)

この言葉って実は凄い怖い言葉ですよ。

だって邪魔者を排除するという明確な意思がありますから。

ローズとピーターのちょっとした言動もこの映画の重要な見どころのひとつなんです。

まとめ

淡々とした映画でアクション映画のような爽快感もない映画です。

しかしひとつひとつのシーンを深く考察していくと何周も楽しめる実に味わい深い映画です。

BL好きな方は絶対気にいるはずです(たぶんね)。

アカデミー監督賞を受賞したパワー・オブ・ザ・ドッグは見ごたえのあるサスペンス映画です。

映像も非常に綺麗で音楽も素晴らしいので時間を作って観ても損はしない作品ですよ。

ぜひご覧になってみてください。

作品情報

作品名
パワー・オブ・ザ・ドッグ

原題
The Power of the Dog

監督
ジェーン・カンピオン

脚本
ジェーン・カンピオン

原作
トーマス・サヴェージ

製作
エミール・シャーマン
イアン・カニング
ロジェ・フラピエ
ジェーン・カンピオン
タニヤ・セガッチアン

キャスト
ベネディクト・カンバーバッチ
キルスティン・ダンスト
ジェシー・プレモンス
コディ・スミット=マクフィー

音楽
ジョニー・グリーンウッド

撮影
アリ・ウェグナー

編集
ピーター・シベラス

製作会社
ニュージーランド・フィルム・コミッション
BBCフィルムズ
クロス・シティ・フィルムズ
シーソー・フィルムズ
バッド・ガール・ギーク
マックス・フィルムズ
ブライト・スター

上映時間 128分