今回は以前に紹介したタイのホラー映画『真実の穴』の解説をしていきます。
これの紹介動画を以前作っているんですが、予想以上に再生回数が伸びていてびっくりしていますw
まさかの12000回オーバー!
話が二転三転する作品で、めちゃくちゃつまんないって人もいますけど個人的にはかなり楽しめた作品です。
(おもしろいかどうかは人によるのはちかたないね。)
クライマックスはみんなの顔芸が凄…展開が速すぎて話に追いつけない方もいたんじゃないでしょうかw
(ほんとに表情の演技すごいw特にピムとばあちゃんw)
というわけで、『真実の穴』の解説は需要がありそうなので今回やってみようと思ったワケです。
完全ネタバレ有りでの解説となりますので、まだ観ていない方はぜひ以前の紹介記事を読んでみてください。
動画も観てね!
もしおもしろそうだなと感じたらNetflixへどぞ。
この記事の動画版も作りましたのでこちらもぜひご覧になってみてくださいね!
穴の中の少女ピニャ
まず穴の中の少女ピニャについて解説しておきます。
穴の中にいた顔が真っ黒で血を大量に吐く少女はピニャと言います。
この子はいったい何者かと言うとマイの長女で、ピムとパットの姉です。
まだピムが幼く、パットがマイのお腹にいたころ、亡くなってしまいました。
非常に妹想いの女の子でしたが障害者というだけで祖母ワンは毛嫌いしていました。
なぜ亡くなってしまったかは・・・後ほど。
脚に障害を持つ少年パット
パットはマイの息子でピムの弟です。
脚に障害を持っていて友達も多くありません。
脚の障害については詳細は不明です。
フェイムという自称イケメンの友達がいますが、こいつはピムに近づきたくて一緒にいるだけのやつなので本当の友達とは言えないでしょう。
作中唯一闇がない人物と言えます。
パットが祖父母の家でどんどん体調が悪くなっていった理由は祖母ワンのところで解説します。
美人で優秀で傲慢なピム
ピムは弟想いで母親にも反抗したりしない非常に良い女の子です。
しかし学校ではかなりのヘイトを買っており、多くの女子から嫌われています。
作中では特に描写はないのですが、自身のかわいさ、勉強も運動もできる優秀さなどを鼻にかけていることがたびたびあるようです。
意識的にしているとは思えませんが無意識的にそのような行動、しぐさがあるのかもしれません。
そしておそらくモテているのでしょうね。
そういうところが他の女子の妬み嫉みを買っているのかもしれません。
自称芸術家?ピムとパットの父クリット
クリットはピムとパットの父親でマイの旦那です。
芸術家で絵を描き、それらを売って稼いでいたようです。
実は子供好きでパットの誕生を喜び、ピニャとピムのこともちゃんと愛していました。
しかし祖母ワンからは初めからあまり好かれていませんでした。
ワンの目にはクリットは毎日酒を飲み、ごろごろだらだらして、売れるか売れないかよくわからない絵を描いている男というただの遊び人とか怠け者として映っていたのかもしれませんね。
能無しの役立たずなんて言っていたので評価は物凄く低かったようです。
長女ピニャが死んでしまったのはクリットの育児放棄・・・とは言い切れませんがそれに近い行動が生んだ結果です。
かくれんぼして遊ぼうと言われて承諾したくせに酒飲んでソファーで寝てしまったためピニャは死んでしまいました。
そもそもクリットがきちんとピニャの相手をしていたらこんなことにはならなかったはずです。
不注意で済ませていいレベルを優に超えている胸糞悪い事件となりました。
このことで祖父母とマイの怒りを買い、殺されてしまいました。
隠蔽大好きな激情家祖父フォン
ピムとパットの祖父フォン。
彼は昔警察官でした。
家族思いで後輩の面倒見も良く非常に優秀。
『犯罪制圧部』という部署の部長も務めていたこともあります。
しかしその実態は不都合なことを隠蔽してしまう恐ろしく陰湿な人間。
クリットの件はまさにその代表的なもので、家で銃殺したのを自殺に見せかけました。
娘マイを守るためにしたこととはいえ、とても警察官がやっていいことではないでしょう。
娘を昏睡状態にさせた犯人を不動産王の息子だと思い込み、待ち伏せし、火だるまにして殺すというとんでもない復讐をしました。
この件もおそらく元部下へ圧力をかけて隠蔽する気だったのでしょう。
しかし娘と事故を起こしたのは警察の捜査通り、不動産王の息子ではありませんでした。
人違いで殺されたなんて本当かわいそ…。
この通り非常に思い込みが強く、一度自分の中で結論がでるとそれを変えることができません。
マイの事故の相手もそうだと思い込んで、他人の話を全く聞き入れませんでした。
家の穴もフォンだけ見えなかったのは彼の思い込みの強さから穴の存在を強制的に排除し、認識しなかったためと思われます。
(バキ並みの思い込み力ッ!!)
またダメな大人代表のように年下の人間から意見を言われると烈火のごとく怒ります。まさに老害!
特に図星をつかれているとなおさらです。
ピムとパットが穴があると言うと異常なくらいブチギレていました。
これは穴の存在を認識しなくても過去にあったことを孫たちに掘り起こされるのを嫌ったためだと思われます。
フォンは殺した不動産王の息子の幻覚をみて、恐怖から発砲し射殺します。
しかしそれは実は妻のワンで、フォンは自らの手で妻を撃ち殺してしまいました。
フォンは罪の意識から銃を咥え、自殺して生涯を終えるのでした。
完璧主義な祖母ワン
『真実の穴』の闇深キャラ2位は祖母のワンです。
ワンの異常性は登場時から溢れまくっていました。
まず孫のパットをクリットと間違え、初対面でいきなり罵声を浴びせました。
フォンがこの子は孫のクリットだと言うと…ニコリってしてましたけど、
いや遅いねん!
いきなり罵声浴びせられて好かれると思うなよ!って思ったのは僕だけじゃないはず。
とにかく娘のマイを溺愛しており、マイへの異常な執着心は残してあるマイの部屋からわかります。
実家にはマイの部屋がいまだ残っています。
写真が飾ってあるのですが不自然にマイだけ切り取られていたり、非常に不気味です。
ピムに対してはマイの生き写しと言っており、『ピム』個人というより『2人目のマイ』としてかわいがっていたのではないかと考えられます。
マイはクリットというワンからすればよくわからない変な男と結婚してしまったから、ピムはそうならないようにしたいというのもありそうでした。
もうこの時点でいろいろ気持ち悪いですよね。
ワンは完璧主義者で相手に完璧であることを求めます。
生活リズムも時間ぴったり、朝食も決まったもの、会話の節々から完璧主義さが見え隠れしています。
障害を持つパット、そして既に亡くなっているピニャはワンの観点から言うと『普通』ではないとなり、たとえ孫であってもただそれだけで容認できない排除すべき存在となっていました。
孫のピニャに対しては化物呼ばわりしていて、ワンの異常すぎる人格を良く表している一言ですね。
ワンがパットにひたすら牛乳を飲ませたがっていた理由は毒殺するためです。
牛乳に殺鼠剤を混ぜ、パットにだけ飲ませ続けました。
マイが牛乳を怪しんで自ら飲もうとすると慌てて止めていたところからこれは明白です。
結果、パットは鼻血や吐血をするようになり、危うく死んでしまうところでした。
この毒殺方法はピニャの時に既に実践済みで、ピニャもおそらく少しずつ毒を飲まされ続けていました。
ピニャはかくれんぼの際に殺鼠剤を飲んでしまったことが死因と言われていますが、本当は殺鼠剤入りミルクが致死量に達してしまったからなのかもしません。
ちなみに殺鼠剤を飲むことでおこる中毒症状をワルファリン中毒と言います。
具体的には鼻血や歯茎からの出血、皮下出血、血尿などが見た目の変化としてわかりやすい症状です。
出血が続くことで大量の血液が失われると、貧血となり元気がなくなったり呼吸が荒くなるなどの症状が見られるようになります。
出血が肺や脳などで起こると呼吸困難や意識障害を引き起こし、死に至る場合もあります。
引用 みんなのどうぶつ病気大百科より
これは犬猫など動物が飲んでしまった場合の症状なんですけど、人間でも概ね同じでしょう。
ワルファリンは血液凝固阻止剤なので出血しやすくなってしまんです。
ピニャは血を大量に吐いていましたし、パットもそうでした。
飼い猫も死んでいるのがクライマックスで発見されていましたが、毒入りミルクを飲んだことが原因です。
あんなものを平気で飲ませる祖母ワンは本当に狂っていると言わざるを得ません。
まともじゃない。
まあ、この家族でまともなのは子供ら以外いないんですが…。
クリットの件以降、フォンはワンのことを頭がおかしくなったと言っていましたが、ピニャに毒を飲ませていたわけですからもともとあたおかな人間だったんですね。
ワンはクリットの件以降、銃痕の穴の怪異に悩まされ、認知症の薬を飲まされ続けていました。
実際には認知症ではなく、フォンが穴を認識しなかったため、ワンは異常扱いされて飲まされるようになっていたんです。
薬を飲むことでワンは穴の怪異を一時的に忘れることができていたようですが、完全にその存在を無視することはできませんでした。
ピムやパットが穴について質問してもワンが知らないふりをしていたのはフォンを怒らせないためでした。
フォンが怒り出すのを避けるために、ワンは穴について話すのを控えていたんです。
ワンは最後、殺鼠剤を大量に飲んで意識不明になります。
そこへフォンが駆け付けましたが、フォンは幻覚をみて恐怖から発砲。
ワンはその銃弾を受け死亡します。
因果応報とはこのことでしょう。
この世に隠せないものの意味とは?
映画冒頭にでてくる言葉
『この世には隠しきれないものが3つある。太陽、月、そして真実だ』
この言葉はブッダ(釈迦)の言葉です。
太陽も月も常に動いていて、雲で隠れることはあっても必ず姿を現します。
真実もまた同じように隠し続けることはできないとブッダ(釈迦)は説いています。
完全犯罪を達成したサイコパス マイ
マイはこの作中、最悪の登場人物です。
学生時代は完璧ともいえる存在だったらしく、まさに学園のアイドル。
働き始めてからは営業成績も高く、どんどん昇進していきました。
子供たちのために夜遅くまで必死に仕事をする姿は子供たちにとっても自慢の母親だったかもしれません。
しかし実際のところ、マイは母のピニャ殺害を黙認し、クリット殺害の実行犯。
はっきりいって完全にヤバい人です。
自分の娘が死んだ原因を追究すればきっと真実にはすぐ辿り着くはずですし、怒りのせいとは言え旦那を撃ち殺したりしたなら普通は罪の意識からまともに生きることが難しいのではないかと思います。
それがマイはバリバリ仕事をこなし、ガンガン出世していきました。
まともじゃないんですよね。
マイはピニャを厄介者としてみていた可能性が大きく、もしかしたら殺害もどこかで考えていたのかもしれません。
なぜマイがピニャ殺害をもくろんでいたか、そう考える理由が3つあります。
①ピム、パットにピニャの存在を教えていなかった。
②マイがワンの子供ということ
③ピニャの死亡原因を追究しなかった
この3つです。
まず一番不自然に感じたのはマイがピムとパットに姉であるピニャの存在を教えていなかったことです。
特別悪いことをした悪人とかならまだしもピニャは普通のめちゃくちゃ良い子でした。
なのにいなかったものとして扱っていたのはマイにとってピニャはどこか排除したい存在だったのではないでしょうか?
次にマイがワンの子供ということ。
マイは母ワンと同じくかなりの完璧主義です。
ワンはピニャを化物と呼び証拠が残らないように毒殺しました。
ワンの娘であるマイはワンの特徴を見事に受け継いでいます。
マイの作る朝食はワンと同じように目玉焼き2つとトーストで顔を作ります。
そして自分が罪に問われないよう完璧に排除したい人間を排除するのがマイなんです。
そして最後、ピニャの死亡原因を追究しなかったこと。
母親であれば娘が死んだ原因は追究するはずです。
子供が殺鼠剤を間違えて飲むにしても致死量を一気に摂ることは難しいような気がします。
殺鼠剤の致死量は大人で300gらしいので子供なら半分くらいでしょうか。
じゃあそれを一気飲みできるかと言ったら、さすがに無理じゃないでしょうかね。
つまりピニャは日常的に毒を盛られていたことがすぐにわかるはずなんです。
なのに究明しなかった。
(まあ警察とかが全然機能してないとかそういうのもありそうですけど。サードアイとか観てるとマジでそう思う。)
むしろピニャの死をダシにクリットを射殺しました。
マイはどこの時点でかはわかりませんがピニャと旦那クリットを殺そうと考えていたのかもしれません。
これはラストシーンの不気味な微笑みがそれを表しているんじゃないかと僕は考えました。
ワンがピニャに毒を持っていたこともうすうすわかっていたと思うし、それを泳がせていたのはクリット殺害計画に使うためだったのかもしれません。
マイは確かに『完璧』だったんです。
なぜ母マイは両親である祖父母を子供に会わせていなかったのか
マイはピムとパットが幼い時に実家を出てシングルマザーとして二人を育ててきました。
それ以来、マイが事故に遭うまで一切連絡を取っていませんでしたし何があっても連絡がいかないようにしていました。
これは祖父母の異常さから子供らを守るため・・・と思っていたんですが、これもしかしたら自分を守るためだったのかもしれません。
ワンの異常なまでの溺愛ぶりに恐怖すら覚えていたのかも。
自称イケメンは何の動画を持っていた?
ピムがシャワーを浴びている動画。
同じチアのチームメイトが動画を撮り、キャプテンを辞退させようとしていました。
それだけじゃなく学校での地位を落としたいというのもあったのかも。
また、このチームメイトの彼氏(?)の自称イケメンの坊主がこの動画をネタにピムをゆすり、肉体関係を持ちたかったようです。
マイが笑顔だった理由
ラストシーンでマイが笑顔で化粧をしていました。
なぜあんな不気味な笑顔だったのか。
それは
父母(両親)を始末することができたから
先ほども言いましたがマイはピニャ、クリットをおそらく始末したかった。
もちろん自分が罪に問われないように。
そしてそれはワンの性格、フォンの隠蔽体質を利用することで叶いました。
しかしここでマイには問題、心にもやもやが残ることになります。
それは真実を知る者(両親)がいるということ。
あの両親ですからマイをかばうでしょうし自首するなんてことはないと思います。
しかし人間いつ、どう心が変わるかわかりません。
この2人もどこかで始末しないといけないと思っていたはずです。
交通事故やピニャとクリットの存在を子供らに知られることになったのは計算外だったかもしれませんが、結果的には両親は発狂して勝手に死んでくれました。
マイからしたらこれほど最高の展開はなかったのではないでしょうか。
そういうところから湧いてきた喜び、腹の底から『ザマミロ&スカッとサワヤカの笑い』が出たのかもしれません。
穴の正体
穴はこの家、つまり祖父母の家の過去を見せていました。
ピムとパットには実はピニャという障害を持った姉がいたこと。
ピニャはピムをとてもかわいがっていたこと。
ピニャが大量に吐血し死んでしまったこと。
ピムとパットの父クリットは酒飲んでソファーで寝ていたこと。
父クリットは家族を愛していたこと。
祖父フォンがクリットの死を自殺にみせてマイを守ろうとしたことなどなど。
穴は祖父母、マイが隠し続けていた真実をピムとパットに教えていたんです。
しかしこの穴が見せる過去は事実ではなかったんです。
なぜならクリットを射殺したのは本当はマイだったから。
つまりこの穴は真実をみせていたのではなく『ピニャが伝えたかったことをみせる穴』だったんです。
自分(ピニャ)が物置で大量に吐血し死んだこと。
ピムとパットには教えられていなかった自分(ピニャ)と父クリットの存在。
祖父母がやったこと。
穴の怪異とはピニャが妹弟を助けるために壁を叩き、穴を覗いてもらおうと必死だったためというわけです。
まとめ
というわけでNetflixタイホラー映画『真実の穴』の徹底解説でした。
ピムやパットの学校生活の部分はあんまりいらないように感じますが、なにか意図していたものがあるのかもしれません。
わかる方、教えてくださいw
単純に怪物をショットガンで撃ち殺す系の脳筋ホラーに飽きた、合わないという方はぜひご覧になってみてくださいね!