今回は前回の続きで『残穢 住んではいけない部屋』のネタバレありでの解説をしていきます。
この記事の動画版も作りました!こちらもぜひご覧ください!
残穢をまだ観てなくて、あらすじや僕の感想を読みたい知りたいという方はこちらの記事をまずお読みください。
感想は一言で言えば『超怖い』です。
『穢れ』の意味
仏教・神道の観念で不潔、不浄のことを指す。
悪しき状態。
特に恨みを伴った死は『穢れ』になりやすいらしい。
残穢を時系列順にして解説
この作品は現在から過去へさかのぼることで真実に辿り着きました。
ここではこれを逆に、まず何が起こったのか、そしてその『穢れ』が現在までにどのようにして残っていったのかを解説していきます。
穢れの始まり:奥山家
奥山家は福岡で探鉱を代々経営していたのですが、100人以上が犠牲になった酷い事故が起きたこともあったそうです。
それは炭鉱の火事。
周りが石炭だらけなので鎮火が難しく、100人以上が炭鉱にいるのに出入口を塞ぎ、空気を遮断して鎮火させました。
その結果、大勢が焼け死んだり、窒息死したりしてしまいました。
この事故で亡くなった(彼らにしてみれば殺された)人々の強い怨念がその土地に残り、穢れの元になり、その穢れに触れてしまった人々がまた穢れを残し、少しずつ拡大していったわけです。
奥山家最後の当主、義宜(よしのり)は家族や使用人を皆殺しにして自身は首をくくったんですが、それをした理由は轟轟という風の音や犠牲者のうめき声を聞いていた描写があるので、犠牲者の穢れに触れてしまったからと考えられます。
この奥山家を発端とした話は多くあり『奥山怪談』として有名となり、話しても聞いても呪われるという怨念の塊のようなものと考えられ、恐れられています。
その場所に行かなくても話だけで酷く不幸になる呪いがかかるってとんでもない負のパワーですよね…。
呪われた美人画の掛け軸と吉兼家
義宜(よりのり)には三善(みよし)という娘がいました。
彼女は吉兼家に嫁いだのですが(場所は首都近郊)、その際に嫁入り道具の中に『顔が醜く歪む美人画』の掛け軸を持ち込みました。
なぜ娘にそんな絵を持たせたのかはわかりませんが、この掛け軸こそ穢れをまき散らす呪物だったんですね。
穢れに触れた三善は2度の流産を経験し、24歳という若さで急死しています。
そして継子(ままこ)で5歳下の当時15歳だった友三郎もこの穢れに触れたことで精神を病んでしまいます。
家族に殴り掛かり家に火をつけようとしたので精神病を発病したと言われ、座敷牢に囚われることとなりました。
呪いの掛け軸のことを知らない人からしたらそう思ってもしかたないですよね…。
その後、友三郎は私宅監置となったんですが、トイレから牢を脱出し床下を徘徊することが多々あったんです。
その理由は炭鉱の犠牲者たちの声が聞こえていたためと言われており、友三郎自身も同じように「ヤケ」「コロセ」そう呟くようになりました。
死後、穢れとなり多くの人を狂わせた「床下の声の元凶」となります。
友三郎はその後どこでどうなったかわからないとお寺の住職が言ってましたね。
ちなみに座敷牢というのは日本では江戸時代とかその前の時代からあったと言われ、ヨーロッパでも貴族の捕虜を部屋に監禁する場合があった時に使われていたそうですよ。
なんとロンドン塔もそのために使われていたこともあるとか。
友三郎の怪異の被害者:中村美佐緒
吉兼家の土地は後に工場と長屋が建ちます。
この長屋に住んでいた夫婦の片割れ、中村美佐緒。
彼女は嬰児殺しの罪で千葉で逮捕されましたが、長屋に住んでいた時に7人の子供を殺していたことが逮捕後に判明します。
小説版では美佐緒は常に妊婦のような体型をしていて、切れ間なく妊娠していたのではないかと書かれています。
またその隠し方があまりにも杜撰だったので、何人も赤子を手にかけたことで感覚が麻痺していたのではないかと考えられています。
美佐緒がなぜ生んだ子供を手にかけたのかと言うと床下からそう命令する声が聞こえ、それに従ったと供述していました。
つまり友三郎の声を聞いたことでそう行動してしまったんですね。
工場と長屋はその後取り壊され、後に高野家と藤原家が家を建てます。
美佐緒に殺された赤子は後に『湧いて出る』怪異、幽霊となりました。
畳をこするような音の原因:高野家
今度はここに住んでいた高野トシヱが赤子の穢れに触れてしまいます。
いるはずのない赤子の泣き声におびえたり、夜中中泣き声を聞いていたことで眠れなくなり、ついには近所の住人が自分に嫌がらせをしていると考え始めるようになりました。
泣き声が聞こえ始めるようになったのは娘、礼子の中絶または流産がきっかけだったのではないかと考えられています。
礼子は男女関係が派手だったという噂があったと、トシヱを知る日下部清子が言っていましたがこれはあくまでも憶測のようです。
礼子の結婚式の日にトシヱはついに発狂し、その夜に縊死(いし:首吊りのこと)してしまいました。
そしてトシヱもまた穢れとなりました。
この時の踏み台を蹴り飛ばす音と帯が床をこする音が岡屋マンションの住人が聞く『音』の正体。
久保さんが住んでいた部屋の前の住人、梶川という男性はトシヱと同じく赤子の泣き声を聞き続けて、これは自分のせいだと考えてただひたすらに「すみませんすみません」と繰り返すようになり、最後はやはりトシヱと同じ結末となりました。
映画ではこの梶川が最後に住んでいた部屋を事故物件と知りながら借りていた男性は、登場時点ではトシヱの姿を見ていませんでしたがラストでは音を聞き、トシヱの姿も見るようになったことが描かれていました。
ちなみに小説版では大家さんがきちんと事故物件だと説明したのにも関わらず入居し、トシヱの霊を見て逃げ出す人が何人もいたことが書かれており、そのことに大家さんはお怒りだったようです。
いたずら電話をする長男:川原家
吉兼家の土地に家を建てていたもう一つの家族、藤原家があります。
藤原家に関しては特に多くは語られていません。
藤原家の土地は人がいつかないようで、問題が表面化する前に出ていってしまうようです。
しかしやはり穢れに触れてしまった人物や家庭は不幸になってしまうようで、ここに居を構えた川原家。
ここの長男は問題児として近所でも有名だったそうです。
母親を怪談から突き落としたり布団を燃やしたり。
さらにはいたずら電話をかけまくっていたという話も。
彼の行動も友三郎の「ヤケ」「コロセ」という言葉の影響なのかもしれません。
このいたずら電話をする彼なんですが、受話器をあげたまま寝てしまうと日下部親子はインタビューで語っていました。
ゴミ屋敷:小井戸家
高野家がいなくなったあと、そこには小井戸家と松坂家が入ります。
小井戸家は母子2人で住んでいたようですが母親が無くなる前後から息子の泰志(やすし)はゴミを溜めこむようになりました。
それはただ集めるのではなく隙間を怖がり、空間という空間を全てゴミでふさごうとしているようだったと元町内会の会長は話していました。
泰志はゴミを家の中に『だけ』集めて溜めこもうとしていたことから、美佐緒の赤ちゃんの怪異に悩まされていたのではないかと考えられます。
湧いて出る赤子をどうにかしてでてこないようにする苦肉の策だったのかもしれませんね。
友三郎とお話をするおばあちゃん:根本家
藤原家は土地の一部を売り、そこには根本家が入ります。
根本家のおばあちゃんはボケていたそうで、床下に猫がいると言っていつも縁側に寝っ転がって、縁の下に餌を投げ入れていました。
このおばあちゃんは友三郎の声を聞いていたんでしょうが、幸いボケていたためその声で狂わされることはなかったようです。
岡谷マンション完成
ここで少しおさらいします。
元々吉兼家があった広大な土地は高野家、藤原家が入り、その後高野家の土地には古井戸家と松坂家が入りました。
藤原家は少し土地を切り分けて売って、その土地に根本家が入りました。(長屋跡地には川原家などが入ったりもした。)
古井戸家は息子の泰志が亡くなり、松坂家は転居、藤原家も残っていた土地を売って転居し、根本家も介護疲れから転居しました。
誰もいなくなった土地は駐車場になり2,3年その状態が続きました。
そしてその後、ようやく岡谷マンションが完成するに至ります。
河童のミイラ:真辺家
奥山家跡地に居を構えた真辺家。
昭和末期ごろの当主の真辺幹男はいわく付きの骨とう品コレクターで、河童のミイラや呪われた刀などを所持していました。
彼は炭鉱の事故の犠牲者の怪異に悩まされ、最後は持ち主を呪うと言われる刀を使って自殺しました。
映画冒頭で少年時代の体験を雑誌に投稿した少年M真辺貴之は幹男の遠縁にあたる人物でした。
岡谷マンションの怪異
岡谷マンションで住人たちが観た、体験した怪異は
・高野トシヱ
・中村美佐緒の赤子
・川原家長男のいたずら電話
トシヱの姿を見たのは久保さんの住む202号室に前に住んでいた梶川。
それと住んでいる子どもたちが目撃しています。
子供たちはブランコと言っていましたね。(そんなにかわいいもんじゃない(;^ω^))
赤子の声を聞いていたのも梶川だけだったかと。
映画のラストの方ではハイハイをしている赤ちゃんの霊がうっすら見えたり、誕生日ケーキのロウソクを消す時に一瞬だけでかい赤ちゃんの顔が映るなどありますが、それによって悲惨な目にあうなどはなく、これに関しては特に悪さをしているものではなかったようです。
それから川原家長男の穢れ、いたずら電話は久保さんのお隣に引っ越してきた飯田一家の奥さんが受けていました。
旦那の章一は友三郎の穢れにより奥さんと子どもを刺殺後、家に火をつけ、自分は首を吊りました。
岡谷マンションの住人ではないですが主人公も川原家長男の穢れを受けたようなシーンが映画のラストで描かれていました。
公衆電話からのいたずら電話。
あれは穢れだったのか、それともただのいたずら電話だったのか。
残穢考察
考察1:なぜ「ヤケ」「コロセ」と言うのか?
炭鉱の犠牲者、そしてその穢れに触れた友三郎は「ヤケ」「コロセ」と呪詛をひたすら呟き続け、聞いたものを苦しめます。
助けてくれでもなくコロシテやるでもなく、なぜ命令形の「ヤケ」「コロセ」だったのでしょうか?
僕はここが一番怖いポイントだと思うんです。
まだ助かる状態で出口を塞がれ地獄のような苦しみの中死んでいった炭鉱夫たち。
その恨みは想像を絶するほど強く深いものです。
末代まで祟るという言葉がありますよね。
これは死んでもなお許さない、根絶やしにしてやるという凄まじく強い恨みの言葉です。
炭鉱夫たちの恨みは末代まで祟るどころか何十年経ってもなお消えず、まったく関係のない人たちにまで影響を与え続けています。
終わりのない負の連鎖、触れただけで呪われる残り続ける穢れ。
いまもなお日本のどこかにこんな穢れがあるのでしょうか。
考えただけで怖い((((;゚Д゚))))ガクガクブルブル
考察2:住職はなぜ嘘をついた?
主人公と久保さんが吉兼家についてお寺の住職に話を聞きに行った際、掛け軸について聞いたところ、火事で燃えてしまったからもうないと言っていました。
しかし映画ラストで実は掛け軸は残っており、住職が保管していたことがわかります。
なぜ嘘をついたのか?
それはこれ以上穢れを広めないためと考えられます。
興味本位で見たがるホラーマニアは多いはずです。
しかし見せたことで穢れを増やして不幸を巻き散らすようなことはあってはなりません。
だから住職は嘘をついたのだと考えられます。
よく呪われた人形なんかも引き取るお寺がありますが、きちんと供養しないといけない物というのは実際にあるし、素人が安易にそういうことをすると不幸を招きかねないわけです。
海外だと座っただけで死ぬ呪われた椅子とかありますよね。
あれは絶対に座れないように空中に固定されていたと思います。
考察3:掛け軸になぜ呪いがついたのか?
奥山家にあった美人画の掛け軸になぜ炭鉱夫たちの呪いが宿ったのか。
これは謎です。
しかし作中の主人公の言葉がしっくりきます。
『こういうディテールが実話怪談の命ですから。』
まったく因果関係のないところに恐怖が宿るのが理不尽で意味不明なんだけど、それが怪談のおもしろさでもあるんですよね。
個人的な考えですが、もしかしたらあの掛け軸はもともとなにかが憑いていたのかもしれませんね。
だからそれに引き寄せられるように炭鉱夫たちの呪いが移ったのかもしれません。
まとめ
というわけで『残穢 住んではいけない部屋』の解説と考察でした。
本当に面白い作品なのでまだ観ていないという方はぜひご覧になってみてください。
今ならプライムビデオで観れますよ!
今回はここまで!